びよんどネットおたより 2017年5月 第24号より転載【2】ーーニュースで「生活保護」を考える(その1)2017年06月18日

“生活保護世帯数の増加が今月も記録を更新”などと毎回流されるニュースが毎日の生活の苦しさにあえぐ人々の頭と心に、どんな風に受け止められていくのでしょう。――テレビや新聞で流されるニュースを、改めてとらえ直して考えてみたいと思います。
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その1)小田原市「ジャンパー問題」に関する検討会で見えた可能性

 今年1月16日、小田原市の生活保護担当の職員たちが2007年に「保護なめんな」という文字の入ったジャンパーなどを作り、それを着て保護利用者を訪問していたことがわかりました。胸のエンブレムには「HOGO NAMENNA」と書かれ、背中には「SHAT  TEAM  HOGO」の文字と、英文で「我々は正義である。彼らの不正を見つけ、追いかけて罰する。彼らが不正な利益のためにだまそうとしたら、こう言おう。“彼らはクズだ!”」と印刷されていました。

ちなみにSHATはS(生活)H(保護)A(悪撲滅)T(チーム)の略語です。生活保護担当部門の職員が、生活保護利用者全員に不正受給の疑いをもっていたのではないか、との声も上がり、行政としての基本姿勢と、福祉事務所(生活保護担当部門)の体質が深刻に問われる事態へと発展しました。

これまでも生活保護利用者の人権を守っていないと、批判を受けた自治体はありましたが、それに積極的に対応して動いた自治体はほとんどありませんでした。ところが今回、小田原市の取り組みは真剣かつ迅速でした。全庁的な課題と位置づけ、慶応大学教授井出栄策氏を座長に、生活保護の元利用者、生活保護の権利を訴えてきた弁護士、先進的な就労支援を行う釧路市元職員などの参加を得て、検討会を設けました。井手氏は弱者を生まず、誰もが安心して暮らせる社会を作るために積極的な発言をしている学者です。また、生活保護の利用経験者を検討会に加えたケースは過去になく、非常に画期的でした。

検討会では「全国の生活保護利用者、地域で生きるすべての人々のよりよい暮らしへの『反転攻勢』のチャンスにしたい」という観点から議論が行われました。そして、職員の意識に焦点を当て、「人間の尊厳を守り、それが組織改革、生きる価値のある社会の実現につながる可能性を示したい」という意気込みでまとめた提言と改善案からなる報告書を4月末に発表、1年後に進み具合を検証することになっています。

生活保護に対する根強い偏見の中で、小田原市に限らず、全国どこの自治体でも生活保護担当部門は不人気といわれ、時として市民からの批判の矢面に立たされます。その現実から目をそむけずに、生活保護担当部門と職員が生活保護利用者の権利を守るための仕事ができるようにするために、小田原市の経験を役立てることが求められています。

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